イントロダクション
公益財団法人環境科学技術研究所は、放射性物質及び放射線の環境への影響等の環境安全に関する調査研究、情報・技術の提供などを行うことにより、原子力と環境のかかわりについての理解の増進をはかり、もって原子力利用の円滑な発展に寄与することを目的として、1990年(平成2年)12月3日に内閣総理大臣の許可を得て設立された公益財団法人です。
これらの研究機関において、『超純水』は非常に重要な役割をはたすことから、性能・コストに関する要望はとても厳しいものです。
そのような厳しい環境での研究・分析分野におけるエキスパートの高久 雄一氏が、何故ピューリックωを選んだのか、インタビュー形式で紹介いたします。
- 公益財団法人環境科学技術研究所
高久雄一 - 丸文株式会社、VG Elemental社(英国)を経て、(財)環境科学技術研究所に入所。名古屋大学 工学部にて学位(工学)取得。
ICP-MSを用いた超微量元素分析法の開発に携わり、現在は環境中の微量元素の化学形態分析法の開発及び動態研究を行われている。
- オルガノ株式会社開発センター
西村寛之 - 1997年オルガノ株式会社入社。
入社後、超純水分析担当。現在はその技術を生かし、小型超純水製造装置の開発に携わる。
ピューリックω開発主任。
公益財団法人公益財団法人環境科学技術研究所とは?
核燃料サイクル施設の設置に伴い、そこから排出される少量の放射性物質の環境および人体への安全性確認の為、1990年に設立されました。大型の研究設備をもったユニークな研究所としてさまざまな成果(放射性物質の環境中での動態の解明やモデル化、被曝線量評価、低線量率放射線長期曝露の健康影響の解明など)をあげています。
事業内容
- 放射性物質等の環境影響等環境安全に関する調査研究
- 放射性物質等の環境影響等環境安全に関する技術・情報の提供
- 放射性物質等の環境影響等環境安全に関する普及啓発
- 原子力開発利用の発展に寄与する人材育成への支援
- その他この法人の目的を達成するために必要な事業
実験室に設置されているピューリックω。実験装置のわずかなスペースに収められています。
主に環境に影響する微量金属元素の分析を行われている高久氏の、研究室に収められたピューリックωの様子です。
タンクを内蔵したコンパクトな本体をクリーンブース横に設置することで、素早く超純水を採水できます。
導入の背景
『分析・研究用の装置導入の選定にあたり、その分析・研究に適した仕様を吟味されているとのことで御座いますが、ピューリックωを選定頂いた背景を教えてください。』
- 高久
基本的には通常の超純水装置であれば、メーカー側で仕様が決められており、カスタムメイドすることがほとんどできません。最初からカスタムメイドで導入しようとすると、大型プラント向け装置のように建屋ごと大型の装置を入れなければなりませんが、うちのように小規模のところでは、そこまでのことはできませんでした。オルガノだと大型プラント向け装置のカスタムメイドの超純水装置をつくるノウハウを持っており、また使用されているパーツや消耗品の類を個別に供給することも可能と知りました。
ピューリックωを選定したのは、そのようなノウハウを持っていて、なおかつ小型機を供給できるオルガノの”カスタムメイド”仕様の対応ができたからです。
ピューリックωは少量使用において、非常にコンパクトであり、またカスタムメイド仕様を盛り込んだ装置になっています。- 西村
ありがとうございます。
先に高久先生の研究室を見学させて頂きましたが、非常にコンパクトに設置されて、ご使用されていることが拝見できました。分析にあたり、非常に厳しい超純水水質が要求される場合、確かに大型プラント装置のような”一品設計”が必要になってきますが、大げさになりスペース的にも導入が難しいと思われます。ただ既製の出来合い製品ではご要望の水質が達成できないことも考えられます。
大型プラントのノウハウがあるオルガノが考えた”カスタムメイド”仕様を盛り込んだピューリックωをご採用頂いたのは、このような理由でしょうか?- 高久
そうです。
こちら(公益財団法人環境科学技術研究所)に来て、10年以上になりますが、その間もプラント用途のパーツや消耗品を供給してもらったり、アップグレードの情報を頂いたりしています。必要に応じていろいろ情報を教えて頂けるので、そういうノウハウを持っているオルガノを重宝しています。- 西村
例えば、新しいイオン交換樹脂ができたら、それを既存装置に組み込む対応をできるということでしょうか?
- 高久
例えば当初ニーズがなかった超純水純度レベルや、ある特定の元素だけを除去するといった技術があり、それを既存装置に組み込み対応できるのは、非常に助かりますね。
- 西村
要はお客様の要望に合わせて装置の大きさによらず、”カスタムメイド”仕様対応ができることが必要ということですね。
『高久氏の”カスタムメイド”超純水製造装置。カスタムメイドの考えた方は、ピューリックωも同様。』
オルガノだと大型プラントのノウハウがありながら小型機も扱っているので、カスタムメイド仕様の超純水装置を作れます。
導入の背景
今回特に高度微量元素分析用の超純水製造装置の導入ということで、ωの性能を十分に発揮できた好例となりました。ここまでの性能を出そうとするとお話し頂いたほぼ”カスタムメイド”のような仕様となるのですが、それを標準製品としてご提供することができ、お客様のご要望に応えられたのが良かったと思います。
次では、さらに高久氏が認めたピューリックωの性能を掘り下げます。
良い点
TOCのコントロールができるというのは重要と考えます。
- 高久
ωの良い点というのは、とりあえず”小型装置の割にはプラントレベルと同じ純度の超純水が採水できる”というところ。あとうちではそれほど重要性はないが、”TOCのコントロール”ができるというのもよいですね。分析業界ではニーズがあると思います。
- 西村
プラントレベルというお話を頂きましたが、それは半導体洗浄に使用されるプラント向け超純水というでしょうか?
- 高久
そのとおりです。専門的ですが、いわゆる”32メガ・64メガ”という少し前のDRAM製造ラインで使用されているような超純水が採水できるということになります。そのレベルの水がこの小型超純水製造装置でできるということは大きなメリットです。
- 西村
あとTOCというお話を頂きましたが、このような小型機器においてもTOC管理やコントロールは必要とお考えでしょうか?
- 高久
そのプラントレベルの装置でTOCの管理を行っているところや、有機系分析、特に微量有機分析を行っているところでは、このTOCがコントロールできるというのは重要になってきます。
ωの良い点
ωの最大の特長であるTOCの低減(TOC≦1ppb)について、
”コントロール(制御)ができる”
という言葉でお話し頂きました。お話しを聞いているとまさに半導体の技術進化と共に水質も進化していることがわかりました。
次では、高久氏が考えるピューリックω推奨の理由をお聞きします。
ω推奨の理由
ピューリックωの超純水カートリッジ
多段処理イオン交換樹脂カートリッジになっています。
- 高久
やはりコンパクトで機能的だということ。
このサイズでプラントレベルの超純水が取れる。これがお奨めできる理由ですね。- 西村
機能面の使い勝手についてはいかがですか?
たとえば、フットスイッチ操作による採水とか、一滴採水とかはいかがでしょうか?- 高久
フットスイッチは非常に重要です。
手で直接装置を触らずに採水ができるというのは大きな魅力ですし、分析において、ほとんどの作業はビニール手袋をして行っているので、操作する為にタッチパネルを触っても反応しにくい。”両手が空く”というのは重要な要素です。後、一滴採水は、・・・面白い機能だが、うちではあまり使用していない。(笑)
有機系での試料調整では効果がありそうですけど、分析する場合、通常の分析では容量で管理するが、うちは重量で管理するので、一滴採水で容量を調整することはないです。- 西村
なるほど、確かに水は温度により容量が変わりますので、100ml=100gとは限らないから、このような場合は容量を合わせこむことはないと思われます。
- 高久
ただ、何度も繰り返すが、プラントと同じレベルの超純水を必要とする場合、通常であれば複雑な多段処理を行う必要があります。
- 西村
多段というのはイオン交換樹脂カートリッジのことですか?
- 高久
イオン交換樹脂カートリッジだけではなく、膜やその他の部材も含めての話です。
多段処理を行うとシステムが複雑化し、処理装置も大きくなってしまいますが、このような小さい装置でここまでの多段処理をして性能を出せるものはない。
これは非常に大きなメリットになるのではないでしょうか。
ω推奨の理由
水質についてはωの良い点にてインタビューさせて頂いたので、装置の使い勝手ということでお話しを頂きました。ωは非常に多機能でお話しを聞かせて頂いた以外にも多数の機能が搭載されています。今後はこのような機能の提案も行って行きたいと思います。
最後に、インタビューの総括です。
総括
- 西村
本日インタビューをさせて頂いて、高久先生はすごく超純水及び超純水製造装置にお詳しいので、非常に驚きました。弊社の人間よりもお詳しいです。(笑)
- 高久
半導体関係の業務に関わっていたので、そういう話は詳しくなりました。
例えば半導体関係では非常に重要なシリカの分析において、イオンクロマトでイオン状シリカを測り、原子吸光でオーガニックシリカを測りますが、コロイダルシリカを含めたトータル分析をどうするか?MS(質量分析装置)を入れて対応しようとか、前処理を変えて対応しようとか、それぞれ測ると濃度が異なるから、引き出して分画しようとか、いろいろやっていました。もう15〜20年前のお話ですが(笑)- 西村
先生のお話しにあわせてオルガノの半導体向けプラント超純水装置が成長しているように感じます。
- 高久
そういう意味では、同じように試薬メーカーの人とは試薬関係のお話しをしているし、一時は超高純度試薬のJIS分析法を決めるお手伝い等もしていました。
- 西村
そういったお話しをお伺いすると、先生の今までのご実績が理解できます。
普通のお客様とのお話しされるレベルが違い”スペシャル”ですから。
インタビューを終えて
超純水製造装置をご使用されている方に、実際にご使用されている様子をお伺いする機会は、ほとんどなく、また超純水製造装置に”メーカー”の人間よりお詳しい方とのお話しということで緊張致しましたが、水質等ご好評を頂けてほっと致しました。
今後も続けてお使い頂けるように性能維持や新たな提案を行っていこうと思いました。