日本薬局方でみる水の種類
医薬品の製造や試験に用いられる水は、注射や投薬によって体内に摂取されるものもあり、その品質管理は飲料水と同等、またはそれ以上に厳しいものになっています。ここでは、「日本薬局方」で定められている製薬・医薬用水について解説します。
そもそも「日本薬局方(JP)」とは?
日本薬局方(JP)は、医薬品の性状及び品質の適正を図るために定められた規格基準書です。初版が明治19年に公布された後、今日まで改訂が重ねられ、現在は第十八改正日本薬局方が適用されています。医薬品の製造等に用いられる製薬用水、医薬品等の試験に用いる水の水質・製法はこの「日本薬局方」の中で定められています。
4種類の製薬用水
医薬品の製造等に用いられる製薬用水は、日本薬局方の中で、その製法や用途別に以下の4種類に区分されています。
図1 製薬用水の種類
〇常水…水道法第4条に基づく水質基準に適合するものです。井水又は工業用水等から製造する場合は、上記基準と併せてアンモニウム「0.05mg/L以下」の規格に適合することが求められます。「常水」は、「精製水」や「注射用水」の原水となるほか、医薬品製造設備の予備洗浄等に用いられます。
〇精製水…「精製水」の製造にあたっては適切な微生物管理が必用であり、それぞれの水処理方法に対応した微生物の増殖抑制を図るか定期的な殺菌処理を行うことが求められます。薬品の溶剤として製剤等に用いられます。
〇滅菌精製水…「精製水」を滅菌した水です。点眼剤の溶剤等に用いられます。
〇注射用水…発熱性物質試験法に適合すること(エンドトキシン規格値:0.25 EU/mL未満)が要求されます。「注射用水」は、4種類の製薬用水の中で最も高純度かつ高品質であり、唯一、注射剤として用いることができる水です。下の図2のように、蒸留装置により製造した注射用水は「注射用蒸留水」と呼ばれることもあります。
図2 蒸留装置による注射用水の製造
医薬品等の試験に用いる水
医薬品等の試験に用いる分析用水は、日本薬局方の中で、「試験を行うのに適した水」とされています。製薬用水のような種類区分はありませんが、それは試験によって適した水が異なるためです。それぞれの試験の目的にかなう水であるか、試験毎に確認することが必要です。
分析用水として、「精製水」を用いているという方も多いかと思いますが、前述の通り、ひとくちに精製水といっても様々な製法があり、水質には幅があります。実際に用いている水が試験を行うのに十分な水質であるか、検証することが重要ですね。
これは医薬品等の試験に限らず、全ての分析用水に共通して大切なポイントです。分析従事者の皆様は今一度、試験に求められる水質を確認されてみてはいかがでしょうか。
まとめ
日本薬局方は製薬・医薬用水のバイブルといえる存在で、これにより医薬品の品質が適正に保たれています。
今回は、日本薬局方に示されている「製薬用水」と「医薬品等の試験に用いる水」について解説しました。
- そもそも「日本薬局法(JP)」とは?
- 4種類の製薬用水
- 医薬品等の試験に用いる水